Our TopicsOOH 広告料金の適正化の動き都市部だけでなく、ローカルでも

ビジネスマッチングが進む
ローカルメディアと広告会社

2020年8月28日、屋外広告取引市場JAODAQ(ジャオダック)の広告会社向け説明会がオンラインで行われた。
JAODAQはOOHメディアのオーナーと広告会社をマッチングさせるクラウド型取引市場を運営するユニークな事業者だ。ネットワークを介して売買気配値を提示するプラットフォームを提供するほか、媒体社の広告ビジネスコンサルティングも行っている。説明会では湘南モノレールのほか、長野県や新潟県の交通媒体などローカルな媒体社からの紹介もあった。
今回注目したのは、熊本県の大型複合型商業施設、「SAKURA MACHI Kumamoto(サクラマチクマモト)」の広告媒体だ。同施設は、ホテルや多目的ホール、バスターミナルなどが入っており、2019年9月14日の開業日には25万人が訪れた熊本のランドマーク的存在だ。地下1階から地上4階までの館内には、デジタルサイネージ57面や大型電飾看板、ポスターなどのOOHメディアがある。
媒体開発における一番の課題は、広告料金をいくらにするのかということだったようだが、JAODAQ独自のメソッドにより解決できたとのことだ。

「媒体の広告料金が決められない」
媒体事業者の課題に応える

デジタルサイネージを設置して広告販売をしようとしたが、料金が決められないという媒体事業者は少なくない。媒体価値から離れ、設備投資の回収計画から試算する例も見受けられる。周辺に参考になる既存媒体があれば、類推もできるが特にローカルな媒体では難しいだろう。
JAODAQは、その媒体の「広告料金が決められない」という課題に応えるビジネスノウハウを持っている。
ノウハウの仕組みは、まず基準となる値を「接触可能人数を基にした独自の関数式」で算出。それに、「媒体の大きさ」と「媒体種別ごとの指数関数」を掛け合わせ、定量的価格を求める。関数式のパラメーターは既存のOOH広告媒体約3万点のデータベースを作成し、それらを統計解析して生み出したもので、「屋外広告計算機」として特許登録もされている。それにロケーションの価値や来場者の属性などの定性的付加価値を係数として掛けたものが広告料金の定価とする仕組みだ。さらに、媒体社が望めば市場価値も加味し、ダイナミックな価格設定を行うという考えだ。
このような考え方を基に開発された代表的な媒体としては他に、東京の「大丸有」にある「丸ノ内メディアリンク」がある。デジタルサイネージ縦長型86面、横長型102面のほか、ポスターの掲出ができるようになっている。
この媒体の定性的付加価値係数は高いそうだが、「92 の上場企業が集まる、その連結売上は135兆円以上、日本のエリート層と呼ぶべき約28万人が就労、高級・一流店舗が集積」などをその特長としてあげ、根拠を示している。
現在、ライブボードのように、携帯端末から取得した人流解析データを基に「接触可能人数」を求め、適正な媒体料金を決める動きが進んでいるが、その一方で、手法は違うが、ローカルでもこのようなOOH広告料金の適正化の動きはある。ぜひ注目してみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2020年11月号からの転載です。