Our TopicsJR渋谷駅をピンク色に空間ジャック!ナイキの「誘目性」高いOOH展開に目を奪われる

MGC、選手お揃いで靴はピンク?誘目性高い色の靴がSNSで話題に

2019年9月15日、東京2020オリンピック日本代表選考競技会でもあるマラソングランドチャンピオンシップ(以下、MGC)が東京で開催された。
レースの広告は、マラソンコースの沿線でもある東京メトロの広告貸切電車を使っても行われ、ポスターは選手のスタートラインに立つ時や走っている際の足だけを見せるビジュアル。ひと目でマラソンを想起させる優れた広告だろう。
一方で、実際の大会をテレビ中継で見ていると、選手の履いている靴が気になった。一様にピンク色のシューズを履いているのだ。SNSでも「男子の靴、お揃いなの?ピンク率激高」「8割がピンクの靴で走ってる。なんていう靴だろう。気になる。」といったコメントが並んでいた。
このピンクの靴はナイキが大会開催日と同日発売の新モデル「ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」。反発性の高さから加速力、推進力の向上が期待されるほか、高い通気性も特徴だ。そしてなにより、その鮮やかなピンク色が多くの観客の目を引いたに違いない。
筆者がさらに付け加えるとすれば人々がナイキのロゴマーク「スウッシュ」を認知するよりも、色を知覚する方が先だった点に注目だろう。一般的に「色」というのは、生活者がブランドに対して最初に知覚するものかもしれない。さらに、このピンクという色彩自体が「誘目性(注意を向けていない対象の発見のされやすさ)」が特に高かったともいえるだろう。

渋谷駅が一面ピンク色に OOHの利点を最大限に生かした装飾広告

ナイキはこの商品の広告を開催日までの1週間、JR渋谷駅で実施。使った媒体は、ハチ公改札周辺の壁面・フロア・天井と隣の階段や一部のエスカレーターの両脇の壁面と天井を使った駅空間装飾型の広告商品だった。
商品のビジュアルは巨大で、特長である厚底を見せ、「日本より速いものはない」というメッセージを掲出。驚いたのは、新モデルのカラーであるピンクのグラデーションで空間全体を染めていた点だ。改札を通る際や、エスカレーターに乗っていると必ず視認されるインパクトある展開。協賛スポンサーではなかったからか、MGCに関する表記はなかったが、大迫傑選手などナイキシューズを履くランニングアスリートたちの姿も写っていたので、市民ランナーなら一瞬で何の広告か理解できたに違いない。
ナイキのモバイル版公式ページにも、このモデルを履いたMGC出場選手の写真が掲載されている。
商品の機能的価値である「速く走れる」点について、商品のスペックを文字で説明するのはなく、選手を出すことで視覚的に訴え掛けていた。さらに、トップ商品を誘目性の高いピンク色で強く印象付けることで、ブランド価値の向上も狙っているのだろう。そのために空間全体をカラーで染めることが可能なOOHメディアを採用したのであれば、うまいマーケティング手法だろう。
結果論だが、MGC実施後も掲出されていれば、より広い層に共感されていたにちがいない。参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2019年12月号からの転載です。