Our Topics東急電鉄、小田急電鉄がサイネージ新商品、OOHメディアの中で進む高機能商品化の動き

OOH広告商品のフラッグシップモデルが登場

2019年6月12日から3日間、「デジタルサイネージジャパン2019」が開催された。特筆すべきは12日に「平成から令和へ、デジタルOOHの広告ビジネスはどうなる?」、13日に「Power of OOH~5G時代に向けたOOHメディアのデジタルトランスフォーメーション~」と基調講演が全てOOH広告関連だった点だ。デジタルシフトが進むOOHメディアがサイネージ業界からいかに注目されているかを示すものと言えるだろう。会場では、LEDディスプレイの展示が充実していたが、基調講演で紹介された東急電鉄田園都市線渋谷駅のLEDビジョンが「すごすぎる!」と話題になった。
この春から稼働したこの広告媒体「ビッグサイネージプレミアム」は、高さ約2m、幅約25mもあり、駅構内では最大級のサイズだ。これを1社独占で活用できるLED発光チップを集積して基板にパッケージングしたLEDパネル「COB型1.9mmファインピッ チ」の設備を採用したとのことだが、耐衝撃性、耐水性等に優れるもので、しかもかなり高精細な製品だ。LEDビジョンは液晶ビジョンに比べコストは高いが、周囲の明るさや反射に強く形状に自由度があり大型化が容易で、主に屋外に設置されて来たものだ。近くで見ると画像が粗く見えるということがデメリットだったが、この媒体は問題ないレベル。上部には光を使った情報コミュニケーションツール「LinkRay?」が設置してあり、スマートフォンと連動した双方向通信にも対応可能など、高機能な広告商品だ。媒体担当者によるとデジタルサイネージ化をするにあたり、使用するデバイスが高価であるため、販売価格がプレミアム(高価格)でも稼働しそうな場所を選択することと既存のアナログ媒体で可能なこと以上の広告品質を提供することを心がけたといい、東急電鉄のOOH広告商品では「フラッグシップモデル」といった位置付けだ。
ネットニュースや業界紙等でも取り上げられ、多くの広告会社や広告主の関心を集めた。その結果、10月までの枠が販売されたが、驚くことに既に完売するほどの人気媒体となっている。
7月からは小田急電鉄が新宿駅でLED方式の広告商品「新宿駅デジタルウォール」を本格稼動させた。こちらもアナログな媒体であったものをデジタル化したもので、高さ1.92m×左右10.24mと大きい。小田急電鉄によると、日本のみならず世界的に、デジタル媒体の新設が盛り上がりを見せるなか、これまでにない多様な広告表現が可能なデジタル媒体の新設を課題にしていたことから実現したとのことだ。「天気や気温などの環境情報などと連動したリアルタイム配信機能」や「IPカメラによる通行者の流動等の計測・分析機能」を使う予定で、こちらも高機能な付加価値を持っている。50以上のWEBニュースサイトで取り上げられ、媒体自体の認知も広がっており今後の広告需要が期待される。
デジタルサイネージのハードウェアや同時に使われるセンシングや配信の技術は目覚ましい勢いで進化しているが、OOHメディアの中でこれらを取り入れ高機能な媒体商品を提供する動きは注目すべきことだ。
両社ともコストや設置工事、付加機能の運用など課題もあったようだが、実現させたことでDOOH広告の普及にいっそう弾みを付けさせることなったに違いない。

※このコラムは「宣伝会議」2019年9月号からの転載です。