Our Topics交通広告グランプリ、受賞作品を発表他のバリエーションに留まらない「尖った」作品並ぶ

雑誌の中づり広告や、電車の迷惑行為だからこその「あるある」を生かす

2019年7月22日、「交通広告グランプリ2019」の受賞作品が発表された。広告作品の中には他の媒体のバリエーション表現に留まらない、交通広告の特性を考えたものがあった。
東京ドーム「怨霊座敷」は、中づり広告で右側部分は電車の中で最もなじみのある週刊誌の表現を模し、思わず読んでしまう仕掛けが施された。「変死・呪われた・裏切り・恨み」などのコピーワークもドロドロした内容で、施設の世界観を上手く表現している優れた表現だ。
ソフトバンクの「電車の中のギガマナー」は、ドア横広告で電車の中で動画を見ている人の「あるある」を表現したものだ。例えば、動画見放題だからといって、「イケてるバンド」のPVにノリすぎる人には「車内で頭を振らないでください。」動画に夢中になっている人には「気づいたら終点にご注意ください。」といった「親切な」注意書きが笑いを誘う。動画見放題の機能的価値をマナーポスター風の逆説的表現で訴える。まさに「キャッチーな」広告だといえる。これら2作品に共通するのは、あらかじめ電車内の乗客を想定しているからこそ、共感や理解を得られやすいものとなった点だろう。

「本物は置けないから・・・」実物そっくりの馬のロボットを展示

日本中央競馬会は日本ダービーのプロモーションとして、等身大の馬のロボットを駅で展示した。レースの魅力を伝えるには主役の馬に直接触れさせるのが近道だと考えて企画したとのこと。ロボットは毛並みが本物そっくりな上、体の各部分が実際に動き、目もまばたきするので非常にリアルだ。現場では多くの人がスマートフォンで撮影する姿が見られた。また、その写真を「#ダービーにつき街にウマ」を付けてSNSに投稿すると、プレゼンがもらえるというキャンペーンも行われていたが、これは今やOOH広告におけるプロモーションの鉄板といえよう。

山手線の車内をライブハウス化エッジの効いた手法で若者の共感を呼ぶ

レッドブル・ジャパンは、音楽フェスの一環で山手線車内にDJ機器やサウンドシステムを持ち込み、話題のアーティストたちがライブを行うイベントを実施した。山手線の1編成を貸し切り、実際に1周だけ運行する「団体専用臨時電車」を使った手法だ。通常あり得ないシチュエーションで、交通広告では最も「尖った」やり方かもしれない。それが若年層には受け、ブランドの世界観に合った展開だったといえよう。

このように、受賞作品の中には電車の中のシチュエーションを踏まえたり、リアルな接点生かしたり、ユニークな使い方するなど媒体特性を最大限に生かした表現がいくつもあった。紹介したのはほんの一部だが、その他の作品もWebサイトで見ることができる。参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2019年11月号からの転載です。