Our Topicsデザインの独自性やデジタルとの連動によりテレビやネットで話題となった屋外看板

“超望遠な”自撮りができる看板
アナログ広告にデジタルな仕掛け

JR東京駅は、一日平均の乗降者数が約90万人と新宿、池袋に次いで全国で3番目に多い駅だ。その八重洲側の駅前に設置されたユニークな屋外看板が話題となっている。「アールエフ」の文字に巨大QRコードと忍者のキャラクター、「この看板が自撮り棒っ?」と描かれている赤い広告だ。
ためしにスマートフォンで看板のQRコードを読み取ってみると、専用のアプリが開かれ、操作画面に移った。ショッピングモール「グランルーフ」の指定の位置に行き、操作すると、驚くことに自分が立っているライブ映像が映し出されたのだ。看板付近に設置されたカメラによる”超遠隔”の自撮りが可能な仕掛けで、カメラの向きやズームイン・アウトの操作、写真の撮影・保存もできた。
設置した広告主は精密機器メーカーのアールエフ(長野県長野市)。医療CTと産業CTでは国内シェアトップクラスで、高い技術を持つ企業らしい試みといえるだろう。
看板が設置されているビルに同社の東京店があり、広報担当者によると、自撮り機能を付けた理由について、「東京店からは非常に見晴らしの良い景色が堪能できることに加え、東京駅前という立地なので、多くの観光客が駅を背景に写真を撮るかもしれない、その際、看板にカメラを取り付け、(一味違った)自撮りを楽しんでもらうことで、SNS上での話題喚起につながるかもしれない、と考えたから」とのことだった。
カメラの操作については、独占されないよう操作中でも約3分でタイムアウトとなり、ブックマークもできないように設定されているという。
週末、多い日には1日約300件のアクセス数があり、TwitterではQRコードを読み取ったと思われるユーザーから、「看板に設置してあるカメラを遠隔操作して、自分の写真を撮れた。チョーおもちろい(原文ママ)」「結構しっかり映るもんで、最新の技術を感じた」「面白いというより感心」といった声が寄せられたとのことだ。また「”自撮り看板”で東京駅前に新名所が出現」「東京駅前の”自撮り看板”がハイテクすぎる」などネットニュースやテレビ番組でも紹介され、担当者は狙い通りと手応えを感じているに違いない。

きぬた歯科の屋外広告
客層に合わせた結果、大きな話題に

兄弟それぞれが八王子と横浜で歯科医院を開業している「きぬた歯科」の広告もテレビやネットニュースで取り上げられ、話題となった屋外看板だ。
看板は、医院名に「インプラント」の文字、院長本人の顔写真とバックの黄色が印象的だ。掲出エリアで院長の写真はさまざまだが、テ?サ?インは一貫しており、何より掲出数が多く範囲も広い。「看板好きで、兄弟で(掲出数を)競い合っている」などの報道もされていた程だ。同看板掲出の背景には、ホームページを見ることが今ほど一般的ではない当時、インプラントを入れるような年代の高齢者にとっては、看板の方がなじむのではないか、との考えがあったという。

このように、”オールドメディア”いわれる屋外看板も、インパクトのある表現やスマートフォンとの連動など工夫次第で、テレビやインターネット上で話題となり、さらにSNSでの拡散も可能となった。屋外広告は地域、業種によっては広告表現に規制があり、デジタル広告などと比べて掲出は容易ではないが、参考にしてみてはいかがだろうか。

※このコラムは「宣伝会議」2020年3月号からの転載です。