Our Topics「きき湯」ブランドの秀逸O O H 施策コロナ禍で働く人々の情緒にアプローチ

「最も疲れを感じる瞬間・場所」
電車の中づり広告でアプローチ

バスクリンは、2020年11月26日の「いい風呂の日」前後にあたる11月上旬から12月下旬にかけて東京や大阪で炭酸入浴剤「きき湯」「きき湯ファインヒート」の中づり広告を大々的に実施した。
担当者によると、自身の経験から日常生活のなかで、「最も疲れを感じる瞬間・場所」は、「帰宅中の電車内で1人になったとき」ではないかと考えたそうだ。
事実、「帰宅中の電車内において、疲れたと感じる人」は最も多く60%以上という調査データもあり(ジェイアール東日本企画調べ)、電車内の中づり広告を選択したという。
お風呂につかる女性のイメージイラストに「いつまで続くのだろう、この状況は。いい加減、テレワークにも疲れてきたなあ。」「あ~今日も疲れた~。リモート会議はコミュニケーションがうまくいかないし・・・」などとコロナ禍の中で働く人々の心情を吐露するような文章が4種類描かれていた。コロナ禍における気持ちのこもったメッセージ広告になっている。
「きき湯」ブランドは2020年秋にリニューアルを行い、コミュニケーションにおける企業の考え方も一新。これまでの「腰痛」「肩こり」など「症状別に効く」という訴求から、「時代が変化したことにより出現した新たな疲労・疲労感に寄り添う」というような内容に設定した。担当者は、疲れを最も感じる瞬間に「今日は風呂でも溜めて疲れをとるか」「早く帰ってお風呂に入って、明日も頑張るか」と思ってもらえるようなきっかけを与えたい、そんな思いで中づり広告を実施したという。

隠れメッセージの入った
読ませる中づり広告

公式SNSには「私たちからの隠れメッセージに気づいたら、Twitterで教えてくださいね」という謎めいたメッセージを出していた。Twitterを見ると、それに気づき解いた者がいたのがわかった。それは、ボディコピーの左端の文字を“縦読み”すると、それぞれ「いいフロの日よ」「あ~コロナ終われ」「コロナに負けるな」「よい睡眠を」となるもの。批判の声もあったようだが「その通りで笑った」「縦読みになっていてほっこりする」「なにも知らずに見てましたが、ふと気づいた時は嬉しいですね!」「何だか強引ですが新機軸ですな。」といった反応もあり、多くの人がSNSで話題にし、広告を褒める内容の手紙がわざわざ送られてきたという。
クリエイティブ制作にあたり、「担当自身が作っていてわくわくすること」と「見た人に面白いと思ってもらえる瞬間をプレゼントできるか」を重要視したそうだが、狙い通りだったに違いない。有名タレントを起用しての表現ができなかった事情もあったようだが、読ませる中づり広告は、元々雑誌の広告で馴染みのあるものだ。
最も疲れを感じる瞬間・場所で、人々の新たな疲労感に寄り添った表現による商品の機能的価値を訴求したこの方法は、OOHメディアの使い方としては優れたものと言えるだろう。参考にしてみてはいかがだろうか

※このコラムは「宣伝会議」2021年4月号からの転載です。