経営層や富裕層に直接アプローチできる広告手法として、いま注目されているタクシー広告。
東京都内を中心に配信されるデジタルサイネージ広告をはじめ、車内ステッカーやサンプリングなど、タクシーという移動空間を活用した広告は、ブランディングやBtoB商材の訴求に強みを発揮します。
本記事では、タクシー広告の種類や料金、導入メリットや活用事例までをわかりやすく解説。「ターゲットの質にこだわりたい」「都心部の経営者層にリーチしたい」といった企業の広報・マーケティング担当者に向けて、タクシー広告の可能性を具体的にご紹介します。
目次
- タクシー広告とは
- タクシー広告の種類と料金
- タクシー広告の主要な配信会社
- タクシー広告のメリット
- タクシー広告のデメリット
- 掲出までの流れ
- タクシー広告の活用事例
- タクシー広告の効果を最大化するためのポイント
- まとめ
タクシー広告とは
タクシー広告とは、タクシーの車内や車体に設置される広告を指します。なかでも近年主流となっているのは、後部座席に設置されたタブレット端末を活用した動画広告(デジタルサイネージ)です。乗客の正面に配置されたモニターで静かに映像が流れるため、視認性が高く、印象に残りやすい媒体として注目を集めています。
以前は、車内ステッカーやリーフレット、アドケース(座席ポケット内のチラシ)といった紙媒体が中心でした。しかし現在は、デジタルサイネージ技術の進化やタブレット端末の普及によって、動画コンテンツを活用したタクシー広告が急速に広がっています。
とくに都市部ではモニター搭載タクシーの数が大幅に増加しており、それに伴い広告出稿の機会も拡大。コロナ禍を経た移動需要の回復とともに、ビジネス層や富裕層への訴求手段として再び注目されている状況です。
他の交通広告との違い
電車広告や駅広告、バス広告などと比較して、タクシー広告にはいくつかの独自性があります。
まず、タクシー広告は24時間いつでも掲出可能な点が大きな特徴です。走行エリアも駅や路線に縛られないため、都市内を自由に移動しながら広範囲にリーチできるのが魅力です。さらに、乗車中の乗客は限られた空間に長時間滞在するため、広告との接触時間が長いのも特徴です。実際に、タクシー1乗車あたりの平均乗車時間は約18分とされており、その間じっくりと広告を視聴してもらえる環境が整っています。これは、電車やバスなどに比べて集中度の高い広告接触が見込める媒体と言えるでしょう。
また、タクシーの利用者には経営者・役員クラスや高所得者層が多い傾向があることから、IT・情報通信・金融・不動産などの高関与商材やBtoB商材との相性も良好です。
このように、タクシー広告は掲載環境・ターゲット層・訴求内容の点で、他の交通広告とは異なる特性と魅力を備えています。目的や訴求したい商材によっては、他の媒体では得られない効果を期待できる点が大きな特徴です。
タクシー広告の種類と料金
タクシー広告には、主に車内モニターを活用した動画広告(デジタルサイネージ)のほか、ステッカー広告やラッピング広告、サンプリング施策など、さまざまな形式があります。
それぞれの広告形態によって、表示方法・視認性・訴求力・費用感が異なるため、目的や商材に応じた選択が重要です。
以下では代表的な広告手法と費用感を紹介します。
動画広告(デジタルサイネージ)
現在、タクシー広告の主流となっているのが、車内に設置されたモニターを活用したデジタルサイネージ型の動画広告です。乗客の目の前約60cmに配置された画面に、15〜30秒程度の動画を繰り返し表示することで、強い印象を残せます。
表示仕様は以下の通りです。
- 画面サイズ:一般的には10~15インチ前後のタブレット型モニター
- 表示秒数:15秒または30秒が基本枠
- 表示回数・頻度:走行中に繰り返し表示される(他広告とローテーション)
とくに、TOKYO PRIME(株式会社IRIS)とGROWTH(株式会社ニューステクノロジー)が展開するタクシーサイネージは、都市部を中心に大きなシェアを持っています。
TOKYO PRIME料金表
以下は2025年10月~12月期の料金です。
対象エリアは全国35都道府県
札幌、東京、神奈川、埼玉、千葉、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡、沖縄、北海道(札幌を除く)、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、富山県、石川県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県(名古屋を除く)、三重県、滋賀県、奈良県、和歌山県、広島県、愛媛県、高知県、佐賀県、長崎県、熊本県
| メニュー名 | 形式 | タイミング | 想定表示回数 | 料金(税抜) |
| 1st Ads FULL(1枠) HALF(2枠) | 動画(音声あり)最大60秒 | 発車直後1本目 | FULL:560万回 HALF:280万回 | FULL:1,800万円 HALF:900万円 |
| 2nd Ads+ FULL(1枠) HALF(2枠) ※2nd Adsに含まれる | 動画(音声あり)最大30秒 | 1st Ads終了後広告枠 | FULL:500万回 HALF:250万回 | FULL:+200万円 HALF:+100万円 ※追加オプション分のみの料金 |
| 2nd Ads FULL(7枠) HALF(14枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2st Ads+終了後広告枠 | FULL:380万回 HALF:190万回 | FULL:1,200万円 HALF:600万円 |
| 3nd Ads FULL(10枠) HALF(20枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2st Ads終了後広告枠 | FULL:180万回 HALF:90万回 | FULL:600万円 HALF:300万円 |
| シートベルト着用アナウンス(1枠) | 動画(音声あり)最大15秒以内 | 乗車直後 | 560万回 | 200万円 |
| 2nd Contents FULL(4枠) HALF(8枠) | 動画(音声あり)最大30秒 もしくは 静止画最大15秒 | 発車から2~6本目コンテンツ枠 | FULL:380万回 HALF:190万回 | FULL:720万円 HALF:360万円 |
| 3rd Contents FULL(4枠) HALF(8枠) | 動画(音声あり)最大30秒 もしくは 静止画最大15秒 | 2nd Ads終了後コンテンツ枠 | FULL:180万回 HALF:90万回 | FULL:360万円 HALF:180万円 |
| 2nd Ads 東京 FULL(3枠) HALF(6枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads+終了後広告枠 | FULL:132万回 HALF:66万回 | FULL:730万円 HALF:365万円 |
| 2nd Ads 関東(3枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads+終了後広告枠 | 90万回 | 360万円 |
| 2nd Ads 関西(3枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads+終了後広告枠 | 90万回 | 360万円 |
| 2nd Ads 東海(3枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads+終了後広告枠 | 33万回 | 132万円 |
| 2nd Ads 九州(3枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads+終了後広告枠 | 23万回 | 92万円 |
| 2nd Ads 北海道(3枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads+終了後広告枠 | 16万回 | 64万円 |
| 2nd Ads 広島(3枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads+終了後広告枠 | 5万回 | 20万円 |
| 2nd Ads 沖縄(3枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads+終了後広告枠 | 6万回 | 24万円 |
| 3rd Ads 東京 FULL(7枠) HALF(14枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads終了後広告枠 | FULL:95万回 HALF:47.5万回 | FULL:380万円 HALF:190万円 |
| 3rd Ads 関東(7枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads終了後広告枠 | 33万回 | 100万円 |
| 3rd Ads 関西(7枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads終了後広告枠 | 45万回 | 136万円 |
| 3rd Ads 東海(7枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads終了後広告枠 | 12万回 | 36万円 |
| 3rd Ads 九州(7枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads終了後広告枠 | 9,2万回 | 28万円 |
| 3rd Ads 北海道(7枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads終了後広告枠 | 10万回 | 30万円 |
| 3rd Ads 広島(7枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads終了後広告枠 | 3.9万回 | 12万円 |
| 3rd Ads 沖縄(7枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads終了後広告枠 | 6.6万回 | 20万円 |
| Targeting Ads | 動画(音声あり)最大30秒 | 2nd Ads終了後広告枠 | 8万回~ | 100万円~/4週間 |
※Taegeting Adsはセグメント掛け合わせに応じて価格が変動します
参考:TOKYO PRIME「MEDIA GUIDE 2025.10-2025.12」
GROWTH料金表
以下は2025年10月~2026年3月期の料金のです。
対象エリアは東京23区内と武蔵野・三鷹地区。
23区内は港区・千代田区・中央区・新宿区・渋谷区が中心
| メニュー名 | 形式 | タイミング | 想定表示回数 | 料金(税抜) |
| FIRST VIEW(1枠) | 動画(音声あり)最大60秒 | 発車直後1本目 | 150万回 | 750万円 |
| BUSINESS VIEW(7枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 乗車後2~8本目 ランダム配信 | 130万回 | 550万円 |
| ECONOMY VIEW(8枠) | 動画(音声あり)最大30秒 | 乗車後9~16本目 ランダム配信 | 90万回 | 300万円 |
| RIDE VIEW(1枠) | 静止画 | 空車ステータス時 | 150万回 | 600万円 |
| PAYMENT VIEW(1枠) | 静止画 | 支払い決済画面 | 130万回 | 400万円 |
| ZONE FIRST(1枠) | 動画(音声あり)最大45秒 | FIRST VIEW後1本目 | 150万回 | 1週間:650万円 4週間:2,470万円 8週間:4,680万円 |
| ZONE BUSINESS(7枠) | 動画(音声あり)最大20秒 | ZONE FIRST後2~8本目 ランダム配信 | 110万回 | 1週間:350万円 4週間:1,330万円 8週間:2,520万円 |
| ZONE ECONOMY(3枠) | 動画(音声あり)最大20秒 | ZONE BUSINESS後9~11本目 ランダム配信 | 70万回 | 1週間:250万円 4週間:950万円 8週間:1,800万円 |
| BUSINESS VIEW+ZONE BUSINESS(2枠) | 動画(音声あり)最大50秒 AD30秒、MEDIA20秒 段積み配信 | BUSINESS VIEW ZONE BUSINESS 配信間4~5本目 固定配信 | 220万回 | 1週間:950万円 4週間:3,610万円 8週間:6,840万円 |
| ECONOMY VIEW+ZONE ECONOMY(2枠) | 動画(音声あり)最大50秒 AD30秒、MEDIA20秒 段積み配信 | ECONOMY VIEW ZONE ECONOMY 配信間12~13本目 固定配信 | 140万回 | 1週間:600万円 4週間:2,280万円 8週間:4,320万円 |
出典:GROWTH「MEDIA GUIDE 2025.10-2026.03」
ステッカー・ラッピングなどその他の広告
タクシー広告はデジタルサイネージ以外にも種類は様々です。
| 媒体名 | 掲出場所 | 掲出期間 | 料金 |
| サイドウィンドウステッカー | タクシー乗降ドアの窓ガラス | 1ヶ月~ | 約3万〜10万円 |
| リアウィンドウステッカー | 後ろの窓ガラス(10台~) | 1ヶ月~ | 約3万〜5万円 |
| ボディステッカー | 車体後部ドアの外側(100台~) | 1ヶ月~ | 約50万〜80万円 |
| アドケース | 座席後ろの専用ケース(200台~) | 1ヶ月~ | 約40万〜60万円 |
| 車体ラッピング | タクシーの車体(50台~) | 1ヶ月~ | 約150万〜175万円 |
※最低台数/最短期間の場合の料金です。台数・期間によって料金は変動します。
広告の設置位置によって、訴求力や費用感にも差があります。目的やターゲットに合わせて、動画広告との組み合わせで活用するケースもあるので慎重に検討しましょう。
タクシー広告の主要な配信会社
広告の種類や料金を把握したところで、次は広告の配信会社についても解説します。
TOKYO PRIMEとGROWTHは、配信台数や対応エリア、モニター仕様などに明確な違いがあり、それぞれに異なる強みがあります。
TOKYO PRIME
TOKYO PRIMEは、全国35都道府県・約7.1万台にサイネージを導入する国内最大級のタクシー広告メディアです。とくに東京では約25,500台に設置されており、都内タクシーの約約63.8%に導入されています。月間リーチ数は全国で3,550万人にのぼる到達力が特長です。
配信先は、日本交通グループをはじめとする大手タクシー会社が中心で、六本木ヒルズや高級ホテルの専用乗り場を多くカバーしています。そのため、高所得者層・役職者・企業の意思決定層へのリーチに強みがあります。たとえば、利用者の約46.8%が課長以上の役職者であり、ソフトウェア購入の意思決定権を持つユーザーも17.9%以上にのぼります。
再生構成は、乗車直後の「1st Ads」から「2nd Ads」「3rd Ads」と続き、間に動画コンテンツを挟むスタイル。平均乗車時間18分を想定して編成されており、広告到達率は60%超と高水準です。広告配信は、全国一斉だけでなく、東京・関西などの各エリアに特化した地域配信や、性別・年齢などを絞ったターゲティング配信も可能です。
新型タブレット端末の導入により、画面サイズの大型化や音量調整機能の向上も進んでいます。料金は、全国配信の1st Adsで1,800万円〜(税抜)、ターゲティング配信では100万円〜と、メニューによって幅があります。
GROWTH
GROWTHは、東京都23区に特化したタクシーサイネージメディアで、約11,500台に搭載されています。都内法人タクシーの約42%をカバーしており、月間リーチは約770万人にのぼります。15.6インチの大型FullHDモニターを活用し、音楽や動画コンテンツ、インタラクティブな機能を備えた“体験型広告メディア”であることが特長です。
利用者は30〜50代のビジネス層・富裕層が中心で、高年収層や役職者を中心にタクシーヘビーユーザーが多い(月4回乗車される人の割合が約70%以上、月11回の割合は約30%)のが特徴です。とくに30代では世帯年収1,000万円以上が37.7%を占めるなど、購買力の高い層への訴求に強みがあります。
放映構成は、「FIRST VIEW(乗車直後)」「BUSINESS VIEW(乗車中)」「ECONOMY VIEW」など複数の広告枠が組み合わされており、1乗車あたりの平均時間18分でロールを構成しており最大16本の広告が表示されます。とくにFIRST VIEWは視認性が高く、注目度の高い広告枠です。
料金は、FIRST VIEW 60秒枠で750万円〜(税抜)、BUSINESS VIEW(2〜8枠目)で550万円〜など、秒数や放映タイミングに応じて設定されています。また、ニューステクノロジーが運営する喫煙所サイネージメディア「BREAK」とのセット展開など、オプションプランも豊富です。
自社に合う媒体を選ぶには
タクシー広告を導入する際は、配信エリア・目的・ターゲット・予算などを総合的に考慮し、媒体を選定しましょう。
たとえば、全国規模での認知拡大やブランドイメージの向上を目的とする場合は、全国35都道府県に対応する「TOKYO PRIME」が適しています。業界最大級の設置台数(約71,000台)を誇り、大手タクシー会社と提携しているため、地方都市を含む広域での広告展開が可能です。
一方、都心部での集中訴求や高所得ビジネス層へのダイレクトアプローチを重視する場合は、「GROWTH」も有力な選択肢となります。都心部での集中訴求や高所得ビジネス層へのダイレクトアプローチを重視する場合は、両方の媒体での掲出をすることで9割カバーできます。
また、商材や目的によっても媒体の選び方は異なります。
- 高額商品やBtoB商材の場合
意思決定者への接触率が高い「TOKYO PRIME」や「GROWTH」のコンテンツタイアップ枠が有効 - 限定エリアでの販促を狙う場合
都道府県単位での配信が可能なメニューを持つ「TOKYO PRIME」が便利 - 効果測定を重視したい場合
配信ログやアプリ連携を活用したターゲティング・検証メニューがある媒体を選ぶと成果が見えやすくなります
媒体選びの際は、訴求対象とするユーザーがどのエリアに多く、どのようなタクシーを利用しているかを明確にした上で、各社の強みや配信メニューを比較検討することが成功への近道です。
タクシー広告のメリット
タクシー広告には、他の交通広告やOOH広告にはない特有のメリットが数多くあります。特に、富裕層や経営層へのピンポイントなアプローチ、長時間にわたる広告接触によるブランド浸透、そしてオンラインへの誘導性の高さといった点で、BtoB商材や高額サービスのプロモーションに非常に適しています。
ここでは、タクシー広告が持つ代表的な3つのメリットについてご紹介します。
富裕層や経営層にリーチできる
タクシー広告は、乗客属性に明確な特徴がある点が大きな魅力です。実際のデータでも、利用者の多くが年収1,000万円以上の富裕層や、企業の経営層・役職者であることが明らかになっています。
このようなハイクラス層に対して効率的にリーチできることから、BtoBリードの獲得や不動産・金融商品・高級車といった高額商材のプロモーションに非常に効果的です。認知度の向上だけでなく、サービス導入や資料請求といった具体的な行動を促す導線も設計しやすいメディアといえるでしょう。
長時間接触によるブランド浸透
タクシー広告は、乗客が約18分間の乗車時間を過ごす車内で、継続的に広告に触れるという特性を持っています。限られた空間の中で、他の情報に邪魔されずに繰り返し広告に接触することができるため、ブランドやサービスの記憶定着にもつながりやすくなります。
また、音声が再生されない環境下でも視覚的に情報が伝わるように設計された動画クリエイティブであれば、静かな空間であっても深い理解を促進できる点も魅力のひとつです。
オフラインからオンラインへつなげやすい
タクシーという閉鎖的な空間では、乗客の多くがスマートフォンを手に持った状態で広告を視聴しています。そのため、「◯◯で検索」「QRコードからアクセス」などのオンラインへの行動喚起が極めて有効に機能します。
とくに、車内モニターにWeb誘導用の情報を表示することで、広告の視聴直後にランディングページや申込フォームへ遷移してもらえる確率が高まります。他のOOH広告と比較しても、「見て終わり」にならず具体的な行動へつながりやすい点は、タクシー広告ならではの大きな強みです。
タクシー広告のデメリット
ここまでタクシー広告の魅力を紹介してきましたが、導入を検討するうえでは注意すべきポイントもあります。とくに、費用面やリーチの絶対数に関しては、他の交通広告と比較してハードルになりやすい部分です。
ここでは、あらかじめ理解しておきたい2つの主なデメリットについてご紹介します。
配信費用が高い
タクシー広告は、他の交通広告と比べても比較的高額な媒体になります。例えば、駅構内のデジタルサイネージ広告は1週間で50〜150万円程度、電車内モニター広告は同じく40〜80万円前後で掲出できるケースが一般的です。
一方で、タクシー広告は同じ期間で数百万円規模の費用がかかることもあり、初めて広告出稿を検討する企業にとってはやや高く感じられるかもしれません。
見る人が限られる
広告が配信されるモニター自体がタクシー車内に限定されているという特性上、広告を目にするのは「タクシーに乗車した人」に限られます。
たとえば、TOKYO PRIMEは約7.1万台、GROWTHは約1.15万台のタクシーに配信可能ですが、そもそもタクシーに乗らない層にはリーチできません。比較として、JR東日本の1路線だけでも、1日の乗降客数は数百万人に達することを踏まえると、タクシー広告の到達人数は限定的であることが分かります。
このため、「幅広い年齢層や地域に向けて一斉に知名度を高めたい」といった大量リーチ型の施策には向いていません。
一方で、都市部に多いビジネス層・役職者層など、高い購買力をもつ層にしっかり届くという点では、非常に優れた媒体です。全国一律の一般向け商品よりも、特定のエリアや職業層に向けたBtoBサービスや高額商材との相性が良く、「広さ」よりも「質」を重視する広告主にとっては有効な選択肢といえます。
掲出までの流れ
ここでは、タクシー広告の出稿を検討してから配信が始まるまでの一連の流れを、5つのステップに分けてご紹介します。
媒体によっては、掲出希望時期の2.5〜3ヶ月以上前からエントリー受付が始まるケースもあるため、全体としては約3ヶ月以上の準備期間を見込んでおくのが安心です。とくに、GROWTHなど一部媒体は半年ごとにエントリー期間が設定されているため、希望の掲出時期が決まっている場合は早めの相談が推奨されます。

- Step1:出稿の検討・相談(広告主)
広告の目的やターゲット、予算、希望エリアなどを整理し、広告代理店へご相談ください。
掲出希望時期の2ヶ月前には初回相談を始めるのが理想的です。特に、特定エリアへの集中出稿や繁忙期(春・秋・年末など)を狙う場合は、早めのアクションが推奨されます。
- Step2:媒体選定・企画立案(広告代理店)
目的に合った媒体(TOKYO PRIME・GROWTH など)を選定し、掲出期間や広告秒数、配信エリア、表示頻度などを含む出稿プランを立案します。
ターゲットの属性や予算感に応じて、複数媒体の比較や最適な出稿構成のご提案もいたします。
- Step3:デザイン制作・広告審査(広告主+広告代理店)
媒体社の仕様に合わせて、動画または静止画の広告素材を制作します。完成後は、媒体社による事前審査を受ける必要があり、審査には通常1〜2週間程度かかります。
タクシー広告は公共空間に掲出されるメディアであるため、誇張表現やセンシティブな内容はNGとされる傾向があります。業種によっては掲出制限があるため、初期段階からガイドラインの確認を行いましょう。
- Step4:入稿・掲出準備(広告主)
審査通過後、納品フォーマットに準じた形で広告データを媒体社に入稿します。
モニター広告の場合は施工作業が不要なため、入稿から最短1週間〜10日程度で配信開始となるケースもありますが、混雑時期にはスケジュールに余裕を持つことが大切です。
- Step5:掲出・掲出後対応(代理店)
配信開始後は、媒体社からのレポート(配信実績・稼働車両数など)を受け取りながら、効果検証を進めていきます。 「視聴後のサイト流入数」「検索回数」「CV数の変化」などをチェックし、必要に応じてクリエイティブの修正や次回施策へのフィードバックを行います。
タクシー広告の効果を最大化するためにも、掲出期間中の状況確認と掲出後の分析を積極的に行いましょう。
タクシー広告は計画的な準備と専門的なサポートがあれば、高い効果を期待できる広告媒体です。掲出期間中の設置状況確認やトラブル対応、掲出終了後の撤去手配や報告書提出、継続的な訴求を希望する場合の再掲出や他媒体への展開提案まで、「掲出して終わり」ではなく広告効果の最大化と次の施策につなげる支援が欠かせません。
オリコムでは、タクシー広告の企画から掲出後のフォローまで、豊富な経験と実績をもとに一貫したサポートを提供しています。初めての出稿で不安を感じる方も、経験豊富な専任担当者が丁寧にサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
交通広告・OOH活用に関するお問い合わせ
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タクシー広告の活用事例
ここでは、タクシー広告を活用した企業の事例を紹介します。
実際にどのような目的で広告を出稿し、どんな工夫を凝らし、どのような成果が得られたのかを知ることで、自社の活用イメージを具体化しやすくなるはずです。
タクシー広告ならではの視認環境やターゲティング特性を踏まえた施策設計や、オンライン行動への導線設計なども含めて見ていきましょう。
FC東京「熱狂タクシー」
- 目的
『2025明治安田J1リーグ』開幕に向けて既存ファンの熱量を高める
新規ファン層(特に都内のビジネスパーソン)へのアプローチ - プロモーションのポイント
ラッピングタクシー
クラブカラー(青・赤)を基調としたラッピングタクシーが都内走行
車内サイネージ(GROWTH)
・過去試合のハイライト、選手の素顔、歴史映像など10種類以上の映像コンテンツを乗客が選択可能。(ニューステクノロジーが運営するモビリティ車窓メディア「Canvas」車両限定メニュー)
・車内タブレットのQRコードから応募できる「ホーム開幕戦チケットプレゼント」キャンペーン展開。 - アプリ連携(S.RIDE)
特別仕様のタクシーを、タクシーアプリ『S.RIDE』から指定配車可能に。 - 成果
・都内を走るタクシーが広告媒体として機能
・視覚的インパクトと乗客体験を融合した新しいOOH
(屋外広告)事例
・特別仕様タクシーを指定して配車するサポーターのSNS投稿が話題になったり、スポーツメディアが本施策を記事で取り上げるなど、通常の広告出稿では実現できないPR効果を実現。
・JリーグID(新規ID獲得にも寄与)経由で1,000件以上の応募があった。
タクシー広告の効果を最大化するためのポイント
タクシー広告は、強い訴求力と高いターゲット精度を兼ね備えた媒体ですが、効果を最大限に引き出すには戦略的な設計が欠かせません。
ここでは、動画クリエイティブの工夫や受け皿となるWeb施策、ターゲットと配信エリアのマッチングなど、成果に直結する実践的なポイントを紹介します。
音声なしでも伝わる動画設計
タクシー広告は、必ずしも音声付きで再生されるとは限りません。
時間帯やタクシー会社によっては初期設定で音声がオフになっている場合もあります。また、走行中の環境音や他の乗客の会話などによって、音声が聞き取りにくいシーンも少なくありません。
そのため、乗客が音声を出せない、または聞こえにくい状況でも、広告の内容がきちんと伝わるような「音声なし前提の映像設計」が重要です。
具体的には、文字情報やキャッチコピー、アイコン、図解などの視覚要素を適切に配置し、音声がなくてもメッセージが理解できる構成にしましょう。
また、冒頭の数秒で「何の広告か」が一目で伝わるような設計にすることで、乗客の視聴態勢に差があっても印象を残しやすくなります。
音声はあくまで補助的な役割と捉え、まずは“無音でも成立する動画設計”を基本とすることが成功の鍵です。
受け皿施策(Webサイト・LP・ウェビナー)が重要
タクシー広告の強みの一つは、視聴直後にスマートフォンでのオンライン行動につなげやすい点です。
広告を見たその場でWebサイトやLP(ランディングページ)へアクセスしてもらえるため、スムーズな導線づくりが重要となります。
その際、QRコードからの誘導を想定する場合は、スマートフォンで見やすく迷わせないLP設計が欠かせません。
とくにLPのファーストビュー(最初に表示される画面)では、広告と同じメッセージやデザインを踏襲し、ユーザーが違和感なく内容を理解できるようにすることが大切です。
また、資料請求やセミナー申込みといったCVポイント(コンバージョンポイント)は、なるべく最短でたどり着けるように配置しましょう。
このような受け皿施策が不十分だと、せっかく関心を持ってもらった見込み顧客の流入を取りこぼしてしまい、機会損失につながる恐れがあります。タクシー広告を出稿する際には、事前にオンライン側の導線も整えておくことが肝要です。
ターゲット層と配信エリアの最適化
どれほど魅力的なクリエイティブを制作しても、届けたい相手に届かなければ意味がありません。
タクシー広告では、訴求する商品やサービスに合ったターゲット層と、広告が配信される地域との整合性をしっかりと確認することが重要です。
たとえば、経営者や士業などをターゲットとした商材であれば、都心部のビジネスエリアを中心とした配信が効果的ですし、富裕層を対象とする商品の場合は、六本木・麻布・銀座など、富裕層の乗車率が高いエリアを重視する必要があります。
最近では、配車アプリの走行・乗車データをもとに、広告配信のエリア戦略を最適化する手法も登場しています。
こうしたデータ活用により、より精緻なターゲティングが可能となってきているため、媒体選定の際には、配信エリアとターゲット像の相性をしっかりと検討し、成果につなげていきましょう。
まとめ
タクシー広告は、費用こそ高めではあるものの、経営層や富裕層といった購買力の高い層に直接アプローチできる点が最大の強みです。
限られた空間での長時間接触によるブランド浸透や、乗車中にスマホ誘導できる環境を活かしたリード獲得にも効果を発揮するため、特にBtoB商材や高単価サービスの訴求には非常に適した媒体といえます。
一方で、リーチの絶対数の少なさや、効果測定の難しさなど、事前に押さえておくべき注意点もあります。
そのため、自社の広告目的やターゲット、予算感と照らし合わせたうえでの導入判断が重要です。
OOH広告に精通し、企画立案からクリエイティブ制作、媒体選定、効果測定の設計までを一貫してサポートできるパートナーとして、オリコムではタクシー広告のご相談も承っています。
「この広告で自社にどんな成果が見込めるのか」「どの配信会社を選ぶべきか」といった初期段階のご相談からでもお気軽にお問い合わせください。
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記事執筆者
向井 直
株式会社オリコム
マーケティングコミュニケーションデザイン局 デジタルコミュニケーションプランニング部 部長
入社後、OOHメディア、営業部門、デジタル関連の複数部門など幅広いキャリアを歴任。
長年にわたりデジタル領域のメディアのみならずプランニング業務に従事。伸長著しいデジタル領域において幅広い視点で取り組む。2021年より現職。
面探しから卒業。KPIから逆算する、失敗しない交通広告プランニング
オフラインは“効果が見えない” ——その不安は、プランニングで解消できます。
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