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2025.10.24

チームの多様性を活かし、新たなコミュニケーションのあり方を提案していく

当社では、2024年から全米広告主協会が開発した「GEM®」(ジェンダーバイアス測定基準)を日本で推進しています。その知見と経験を基に、25年6月には「DEI Quick Checker™」を正式リリース。広告表現がDEI(多様性・公平性・包括性)に配慮できているかをスピーディーに測定できるソリューションを開発しました。この記事では4人のプロジェクトメンバーが、どのようなきっかけや話し合いを経て開発を進めていったのか、ざっくばらんに語り合います。

栗原 雅代(くりはら まさよ)

  • 所属:
    マーケティングコミュニケーションデザイン局ストラテジックプランニング部
    マネージャー
  • 社歴:
    2007年7月中途入社
    入社時より一貫してマーケティング・調査に関する部門に所属。
    当社の生活者探求ラボ「シルホド!」にも当初から参画しており、そこでの知見も踏まえたチームリーダーとして活動。
    JMA認定マーケティング・マスター

渡辺 澪(わたなべ れい)

  • 所属:
    マーケティングコミュニケーションデザイン局ストラテジックプランニング部
    ディレクター
  • 社歴:
    2013年4月新卒入社
    営業、デジタルメディア、マーケティング部門と幅広い職種を経験。
    デジタルデバイドに向き合う「デジタルわかる化研究所」への参画など、コミュニケーションを通じた社会課題の解決に意欲的に取り組む。
    本プロジェクトでは栗原と共にアナリストとしてDEI Quick Checker™ やGEM®の開発・推進を行っている。

土田 琢磨(つちだ たくま)

  • 所属:
    アカウントプランニングルーム
    シニアディレクター
  • 社歴:
    2002年4月新卒入社
    クリエイティブ職(コピーライター)として入社し、2013年9月に一度退社。
    同業の広告会社、デジタル領域のマーケティング会社を経て、今年の4月に当社に出戻り復帰した。DEI Quick Checker™のサービスを販売する営業部門の所属であるが、クリエイティブ領域(サイト制作含む)のCDという立場で実働。

富樫 慶(とがし けい)

  • 所属:
    アカウントプランニングルーム
  • 社歴:
    2021年4月新卒入社
    入社5年目ながら、OOH、デジタルメディアの所属経験があり今年度から当該部門に所属。

“いいコミュニケーション”の土台を、みんなでつくる

―はじめに、このプロジェクトに参加したきっかけを教えてください。

栗原

プロジェクトは、私と渡辺、プランニング・ソリューション担当の田中の3人でスタートしました。まず「GEM®(ジェンダーバイアス測定基準)」を日本に広める活動を始め、その知見を広告表現の検討段階でも活かせるようにと開発したのが「DEI Quick Checker™」です。

渡辺

私はそれまで、田中と一緒に「デジタルわかる化研究所※」で、広告コミュニケーションの力で社会課題を解決する仕組みづくりをしていました。その流れで、田中から声をかけていただいた次第です。年次的には中堅社員になっているなかで、ここ数年自身の仕事の幅を広げたいという気持ちもありましたし、単にテーマ自体に面白さも感じていて、二つ返事で引き受けました(笑)

※デジタルわかる化研究所:https://digiwaka.jp

栗原

渡辺さんは新しいことに前向きなタイプだよね。私も考えるより前に行動しちゃう(笑)。

富樫

僕は部署異動でアサインされたんですけど、最初は「DEIって何?」っていう感じで……。それまで所属していたデジタルメディアとは違って、社会課題や広告表現全般を扱うから、やれることも学べることもとにかく広いなっていう印象でしたね。

土田

僕はクリエイティブ制作側の人間なんですけど、入社前にオリコム主催のワークショップに参加したんです。そこでプランニングの部署がコミュニケーション分野にかなり入り込んでいるのを見て「いいな~」と思った。前職では、別部署の人たちがクリエイティブに参加することはあまり無かったので。部署をまたいで1つのプロジェクトを進めていけるのは面白いし、僕も参加したいと思いました。

渡辺

皆、肩書きはあるけど、「これをやる」っていう決まりはないよね。それぞれ異なるバックボーンがあるから、得意なことを活かしながら自分にできることを考えて動いているって感じがします。

富樫

ただ、組織全体で「新しいプロジェクトを盛り上げていこう!」っていう勢いはすごく感じます。僕は、クライアントがデジタルに求めることは大まかに予測できますけど、それをDEIの視点でどう課題解決やサービスの利用につなげていくのか提案するのは、まだ不安がある。そこを部署にかかわらず相談しながら取り組めるのは心強いです!

―プロジェクトを進める中で印象的だったことはありますか?

土田

この前、「DEI Quick Checker™」のサイトリニューアルをきっかけに、チームメンバーで話し合う機会がありました。そしたら「いいコミュニケーションを提供したい」っていう点で、全員同じ気持ちだってわかって、嬉しかったなぁ。広告表現をチェックするというと、炎上しないようにクリエイティブな部分を削るような、ネガティブな印象を持たれそうじゃないですか。でも「DEI Quick Checker™」の真意はそこじゃない。誰も傷つけず誤解を生まない形で、クライアントが伝えたいメッセージを届けたい。その後押しをするためにつくったものなので。

富樫

そうですね。面白い表現を潰すんじゃなくて、「面白い表現を安心して出せる環境づくり」をお手伝いしたいです。「DEI Quick Checker™」の良いところは、100を基準としたスコアを算出できる点だと思います。客観的な指標があることで、「こういう表現はありかなしか」「どこに配慮が足りないのか」といったことをフラットに議論できる。広告の提案の幅はむしろ広がったように思いますね。

渡辺

「DEI Quick Checker™」の目的は、「企業と生活者のすれ違いをなくすこと」です。企業広告が炎上しているケースって、制作側の「そんなつもりじゃなかった」ということがほとんどだと思います。表現の仕方だったり説明不足だったりで、生活者の反感を買ってしまう。それはすごくもったいないじゃないですか。そういうディスコミュニケーションをなくしたいという思いがあります。

栗原

こういった話って、意外とこれまでしてこなかったんだよね。だから「皆そんな風に考えてたんだ」っていうのがわかって、それから少しチームの雰囲気が変わったような気もしています。自分とは考え方が違っても、「こういう考え方をしているんだ」って、話し合いをきっかけに、一人ひとりの活躍を後押ししやすくなった気がします。

それぞれの視点や強みが、チームの可能性を広げていく

―チームの雰囲気や活動についてはどうですか?

渡辺

圧倒的に「CANよりDO」。チャットが動かない日がない(笑)。

栗原

朝から、すごいスピードで動いているよね。打ち合わせをして行動して、「じゃあ次! 次!」って、噛みしめる前に次のことが起きています(笑)。

土田

プロジェクトがやりたくて集まっているメンバーだから、熱量はすごいです。

栗原

ただ、お互いの意見をバチバチに戦わせるってこともないよね。週1回の定例会でも、あんまり意見がすれ違うことってなくって。アプローチや解釈の違いはあるけど、目指すゴールは同じというか。

富樫

それで言うと、DEIって結構難しくて。例えば渡辺と僕で意見が違っても、どちらが正解かは一概には言えないことが無限にあるんです。だからこそ、コミュニケーションが重要になる。そういう意味で、このチームは本当に偏りがない。専門分野も年代もバラバラで、多様性にあふれている。DEIを取り扱うチームが多様性を体現しているのは、とてもマッチしているなって感じます。

栗原

たまたまですけど、今のメンバーは「会社の縮図」みたいになっているんです。マーケティング、クリエイティブ、デジタル、営業と全員バラバラで、「この人が主役!」っていう中心メンバーがいなくて。

渡辺

そう、だから別に正解不正解っていうより、お互い自分の領域からの視点で話してるんだなって。意見や解釈の違いが生まれたときは、しっかり対話するようにしています。そのうえで、「じゃあ今回のゴールに向かうためには〇〇さんの案がいいけど、△△さんの案は別の機会で使えそうだよね」みたいな感じで。意見が違うってことは、むしろ選択肢が増えること。「ブラッシュアップのチャンスだ!」とすら思います。

栗原

それはあるよね。うちのチームのいいところな気がする。それに、誰か一人の「特別な人」がいないからこそ、各自が自分で考えて行動して、常に進化し続けている。全員が「生活者」の視点から考えて行動できるし、それぞれのアクションを尊重する姿勢があるところが強みだと思います。

企業と社会、どちらも幸せになれるコミュニケーションを目指したい

―このチームで今後実現していきたいことはありますか?

渡辺

ここまで大きくなった部署横断型プロジェクトって、おそらく当社でも初めてなんです。通常業務もやりながらプロジェクトも担当する“二足のわらじ”状態で進めてきて、今もそれは変わらないですが、プロジェクトが大きく育ってきたことで、人や時間、お金を会社から提供してもらえるようになりました。会社から事業として認められたのは、誇らしいです。

土田

誰かの思いからはじまった社内プロジェクトが事業として成り立つところまで形になったのは本当に貴重。こういうプロジェクトが、これからもどんどん続いていってほしいな。

富樫

そうですね。オリコムは、本気でやりたいことに挑戦できる環境だと思います。

渡辺

たぶん「やりたいことがある!」っていうマインドがある人は、社内にもたくさんいると思うんですよ。でも、やり方や声の上げ方がわからなくて行動を起こしづらいのかも。そんな人にとって、このプロジェクトが1つのロールモデルとなって、踏み出すきっかけになったら嬉しいです。

土田

社内だけじゃなくて広告業界全体から見ても、このプロジェクトって大きな意義があると思うんだよね。今まで広告会社は「メディア・コンテンツ」を売ってきたけど、僕たちは「DEI Quick Checker™」を通して、コミュニケーションのあり方を提案しているように思う。これからの広告業界にとっても新たな一歩になれればいいな。

栗原

広告だけじゃなくてSNSもそうですけど、今起きてしまっている炎上って、一部分だけ切り取られて文脈がちゃんと伝わっていないことが多いのでは?と思います。だから、伝えたい内容から各種媒体といった発信手段までをトータルで設計して、企業が伝えたいメッセージを届けるようにすると炎上しづらくなるんじゃないかな、っていうことは考えています。

土田

ですね!作り手の狙いや意図が、誤解のない形で生活者に伝えられることが、「いいコミュニケーション」なんだと思う。制作に携わっている人で、ちゃんとしたものを作りたくない人っていないと思うんですよ。クライアントやスタッフと何度もやりとりを重ねて、一生懸命いいものを作ろうと思っているはず。それが意図せず誰かを傷つけてしまったり誤解されたりしたら、やっぱりすごくショックだから。

渡辺

かと言って、「DEI Quick Checker™」のスコアが悪いから「絶対にダメ」というわけではありません。あくまで数値は、表現方法についてもっと深く議論してもらうための一要素。最終的には、各コミュニケーションで大事にしたい企業・ブランドとしてのメッセージとのバランスも出てくると思います。炎上リスクをゼロにすることは現実的には難しいですが、客観的な数字を手がかりに表現を見直すことで、スルーされてしまう可能性のあった“違和感”に向き合い、企業として判断できるところが、「DEI Quick Checker」の良いところだと思います。

栗原

うん。このプロジェクトは第一歩で、中長期的には「DEIコミュニケーションデザイン」といった考え方をもっと社会に広めていけるといいなと思います。

渡辺

DEIに配慮したうえで、会社として伝えたいメッセージはしっかり乗せていく、なにかをつくろうとするとき、そんな議論ができるのが理想です。私たち自身も、コミュニケーションを止めるのではなく、進めることがミッションだと思っています。

―チームを一言で言うと

栗原

新しいコミュニケーション領域をどこよりも早くつくりたい。そのためになくてはならない「挑戦心」にあふれたメンバーが揃っているなと感じます。

渡辺

DEIは広告業界でも新しい領域。前に進めるためには「できるできない」よりも「やるかやらないか」が大事で、その意識がチームを動かし続けていると思います。

土田

事業として形のないところから出発して、新しい時代のコミュニケーションという形のないものを今まさに作ろうとしている。これまでにないものをクリエイトできるチーム。

富樫

DEI の 「Diversity(多様性)」を体現しているチームだと思います。所属も立場も世代もバラバラだからこそ、自由で新しい発想が生まれています。

経営陣が語る開発への思いと今後の展望

向かって左「中島社長」、右「田中役員」

中島社長

社会の多様化が進む中で、ひとりひとりが尊重され、自分らしく生きることへの人々の希求は、ますます高まっています。時代を映す鏡と言われた「広告」も、送り手側がこうした変化を捉えなければ、時に思い込みや偏見を助長する表現として受け取られ、受け手側の生活者に違和感を生じさせ、共感を得ることは難しくなってきています。送り手の固定観念を外さなければ、生活者の本当の気持ちは見えません。

オリコムの企業理念は、「世の中に一つでも多くの良い関係を創造する」こと。私たちは、人や社会の小さな変化や兆しに目を凝らし、生活者とクライアントのより良い関係につながる「結び目」を発見し、コミュニケーション領域で豊かな社会に貢献します。

なかでもジェンダーに関する表現は、人々の無意識の偏見や固定観念を再生産しがちな領域。送り手と受け手のギャップが気になります。当社の過去の調査でも、9割のマーケターが「ジェンダー表現に配慮している」と回答するも、「ジェンダー表現に配慮されている」と回答した生活者は3割に留まった、というデータがあります。マーケティング・コミュニケーションにおいて、このギャップを解消する手立てはないか。それが私たちの活動の出発点となりました。

田中役員

全米広告主協会ANA/SEEHERが世界展開する「GEM(ジェム:ジェンダー・イクォリティ・メジャー)®」の日本での運用知見に、定性調査による生活者心理の探究成果を組み込み、NTTデータ社開発の「Neuro AI」を活用して、対象範囲をDE&I(多様性・公平性・包括性)領域にまで拡張した「DEI Quick Checker TM」は、ネガティブチェック的にコミュニケーションフローを止めるものではなく、生活者の思いに配慮した、効果的でより良いコミュニケーションを生むためのクイック・ソリューションです。ブランド・エクイティを大切に考え、生活者の反応のシミュレーション結果を理解したうえで、どこまでやるか、どのようにやるかをブランドとして適切な判断を下していただくための、「変化する時代の中での良識のアップデート」のサポートが目的です。

同じクリエイティブでもオケージョン次第で受け止め方は変わるため、今後は制作過程で適宜「DEI Quick Checker TM」が活用されるような状況を生み出していきたいと考えています。


DEIコミュニケーションラボ

企業とブランドの良い関係をつくる。 ジェンダーや多様性などDE&Iの領域を中心にブランド価値を高める具体的なアクションとして、DE&Iに関する表現の評価測定サービス「DEI Quick Checker™」「GEM®」をご提供しています。