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2025.09.05

ジェンダーバイアスとは? 基本的な意味や広告制作で注意が必要な言葉の例を紹介

広告は多くの人の目にふれる制作物であることから、広告表現によって誰かを傷つけたり不快な思いをさせたりすることのないよう、細心の注意を払う必要があります。なかでも、ジェンダーに関する表現は、広告表現において注意を要するポイントの1つです。なぜなら、ジェンダーバイアスにもとづくステレオタイプな表現の制作物はメディアを通じて性的役割を強化し、結果として、社会的不平等や格差の拡大を助長する要因にもなり得るからです。

この記事では、広告の作り手側が必ず理解しておくべき「ジェンダーバイアス」について、基本的な考え方や問題点をわかりやすく解説しています。また、広告制作において注意を要する具体的な言葉の例や、ジェンダーバイアスにとらわれない広告表現を実現するためのポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

「ジェンダーバイアス」とは何か

「ジェンダー」は訳語すると、社会的・文化的に形成される性差であり、「バイアス」は偏見です。つまり、「ジェンダーバイアス」とは、ジェンダーに関わる先入観や固定観念にもとづく偏見や、そこから生じる差別を意味します。ジェンダーバイアスは、私たちの経験と深く結び付いており、社会的・文化的な慣習や成育過程で触れる情報、メディアの表現などを通じて無意識のうちに形成されています。そのため、本人はよかれと思った発言や態度が意図せず人を傷つける恐れがあるのです。ジェンダーバイアスは誰もが持ち得るものであることを認識し、感覚や考え方をアップデートしていく努力が一人ひとりに求められています。

広告制作において注意を要する言葉の例

では、どのような表現に注意をしたらよいのでしょうか。具体的な言葉の例も挙げながら、ジェンダーバイアスに対する理解を深めていきます。

1. 男性性/女性性を固定化しかねない表現

性別の違いを個人の性格や思考と結び付ける表現は、いわゆる男性性/女性性の固定化を助 長するおそれがあります。たとえば「男なら……」といった言い回しや、「長い髪」「化粧をしている」といった特徴を「女らしさ」と直接的に結び付ける伝え方などは、その一例といえるでしょう。多様な感覚・考え方の人がいることを前提とし、性別にもとづく単純な図式化をしないことが大切です。

2. 性別や容姿を特別に語る表現

性別や容姿を特別に強調する表現にも注意が必要です。たとえば、「女性起業家」や「イクメン」といった言葉は、あえて性別を強調することで、役割が本来男女共通で担えるものであるにもかかわらず、特別視してしまう表現です。また、「美人すぎる○○」のような表現は、一見褒め言葉のように思えますが、女性を職能ではなく容姿で語る枠組みに押し込め、社会的役割の理解や評価を歪めかねません。こうした職業や社会的役割に関する先入観にもとづく表現が用いられていないか、注意深くチェックする必要があるでしょう。

3. 性別によって興味関心や嗜好・行動の違いを断定しかねない表現

性別ごとに期待される特性や考え方、行動などを断定しかねない表現も避ける必要があります。たとえば「女子力アップ」「割り勘男子」といった言葉には、「女性は本来こうあるべき」「男性はこう振る舞うのが望ましい」といった先入観が色濃く反映されているといわざるを得ません。興味関心や嗜好・行動は人それぞれであり、性別によって決定付けられるものではないという点を十分に理解しておくことが重要です。

4. 応援し寄り添う姿勢が性差の固定化につながり得る表現

メッセージを送る相手に寄り添う表現が、かえって性役割の固定化につながることもあります。一例として「子育てに忙しいママへ」というキャッチコピーがあるとしましょう。実際に子育てに追われている女性は少なからずいると考えられますが、子育てに忙しいのは「ママ」だけだと断定されているかのように受け取る人もいるかもしれません。このように、現状に寄り添う表現のつもりであっても、捉え方によっては違和感やストレスを与える可能性がある点を十分に考慮する必要があります。

ジェンダーバイアスにとらわれない広告表現を実現するには

ここからは、ジェンダーバイアスにとらわれない広告表現を実現する上で、意識しておきたいポイントを確認しておきましょう。

ジェンダーの観点で生活者からNGがでた表現の事例を知る

広告表現を検討する上で、前例を知ることは非常に重要なポイントです。過去に物議を醸した広告表現や炎上した事例を収集し、担当者間で共有しましょう。また、炎上したという事実の共有にとどまらず、どういった表現がなぜ問題視されたのかを深く分析することが大切です。生活者がどのような点に違和感を覚え、何を問題視したのかを本質的に捉えなくてはなりません。こうした地道な分析の積み重ねが、生活者の感覚への理解を深めることにつながります。

生活者洞察を徹底し“リアル”な生活者を捉える

生活者のジェンダー意識が高まる中で、単純に女性を男性に置き換えるといった表面的な調整は、すぐに見抜かれるようになっています。オリコムの調査でも、ジェンダー表現への配慮に欠ける理由として「男性がわざと家事をしている」と鋭い指摘をする生活者もいました。ジェンダー表現において本当に大切なのは、登場人物が男性か女性かではなく、ひとりの人としてその行為を自ら望んで行っているか、その意思が伝わるかどうかです。ここでの“リアル”とは現実をそのまま切り取ることではなく、生活者が望む真の姿を描くことを指します。たとえば、家事や育児はジェンダー表現として話題に上がりやすいですが、女性が家事・育児を行うこと自体が悪いわけではなく、そこに本人の意思や喜びが伴っているかが重要だといえます。そのためには、机上の発想にとどまらず、今を生きる生活者を徹底的に観察し、生活者が本当に求める姿を的確に捉えることが重要です。

客観的に広告表現をチェックができる体制を構築する

しかしながら、前例を分析し、生活者洞察を徹底しても、ジェンダーバイアスから完全に逃れることは難しいものです。 というのも、オリコムが広告制作に携わる方向けに行っている、実際に放映されたCMをもとにジェンダーバイアス表現を評価するワークショップがあります。そこでのCM評価結果を集計してみると、ジェンダーバイアスを感じ生活者からは評価が低かったCMに対して、ワーク内で“問題ない”と評価した数の割合は25%にも上りました。生活者と同様に低評価をしていたとしても、その評価が確固たるものだと自信がもてていない様子も見られ、ジェンダー表現の良し悪しを正しく評価し、制作することの難しさが現れています。

対象:オリコム主催の広告代理店・メディアパートナー・リサーチパートナー・広告主のブランド・宣伝担当等向けワークショップ参加者(n=127) 方法:各評価項目(印象、尊重、特集のされ方、ロールモデル)の延べ回答数を基に算出

▼表現を評価してのコメント(一部抜粋)

  • 女性が弱者として描かれているように見える。
  • よくある表現かもしれないが、物や性的な対象という女性が根底にあって生まれた感じがする。
  • ターゲットを捉える広告としては間違っていないのでは?一方でブランドイメージとしてどちらかといえばマイナスの印象。
  • 広告としては〇、ブランドとしては×。
  • 少し性的なものを想起させるという目線がありそう。
  • 女性が弱者的な表現がジェンダーバイアスにある考え方に感じる。
  • かわいらしい見た目でも強くて素敵だと感じた。
  • (自分が)男目線ということもあり判断がつかない。

そのため、意図せず人を傷つけない表現を作るには、主観ではなく客観性の高いチェック方法を取り入れることが重要です。主観による見落としや思い込みを防ぎ、客観的に広告表現を見つめ直すことで、企業やブランドにとって本当に望ましい表現を選び取ることが可能となります。

生活者が広告を目にした際の感じ方・映り方を数値で把握できる「DEI Quick Checker™」

そこで、より客観性の高い広告表現のチェックを行いたい事業者様におすすめなのが、DE&I・ジェンダーに関する評価測定サービス「DEI Quick Checker™」の活用です。好き・嫌い/良い・悪いといった表層の奥にある人間の感情と表現評価の因果関係を研究し、独自の指標「DEIスコア」を確立。基準値(100)を設けることにより、生活者が広告を目にした際の感じ方・映り方を数値で客観的に把握できる点が特長です。担当者の直感や経験則に頼らない客観性の高い広告分析を取り入れたい事業者様は、ぜひ「DEI Quick Checker™」をご活用ください。


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