広告に関するジェンダーやDEIに配慮した広告表現の動向・規制の状況【世界】

ジェンダー平等への関心が世界的に高まるなか、その影響は広告表現にも及んでいます。日本では広告表現における規制というと、薬機法や景品表示法に関する規制を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、世界的には、ジェンダーやDEI（多様性・公平性・包括性）に配慮した表現の重要性が高まっています。本記事では、そうした世界的な潮流の背景と世界の動向を紹介します。

目次

• 世界的にジェンダーやDEIに配慮した広告表現が注視されている背景
• 広告に関するジェンダー表現の世界的動向
• 客観性を取り入れたDEI Quick Checker™ 活用のメリット
• ジェンダーやDEIに配慮した広告表現へ

世界的にジェンダーやDEIに配慮した広告表現が注視されている背景

ジェンダーやDEIに配慮した広告表現への機運が高まっている背景には２つの観点があります。

消費者保護

広告は多くの人の目に触れることから、一定の社会的影響力をもっています。単なる商業的なメッセージにとどまらず、社会の価値観を形成する力を持っているため、事実と異なる情報や消費者を軽蔑したり消費者がこうありたいと思う姿とは逸脱した表現が世の中に流布された場合、消費者に不利益を与えたり傷つけてしまうリスクが生じます。

そのため、従来の「消費者保護」の観点においては、景品表示法や薬機法が中心となって語られていましたが、昨今はこれらの法律や規制を遵守するだけでなく、その広告表現をすることで「消費者の価値観や考え方にどのような影響を与えるか」という視点で表現を見直す重要性が増しています。とりわけ、多様性や差別のない社会を重んじる潮流にある今、こうした価値観に対する配慮は、広告表現においても欠かせないものとなっています。

ブランド価値の維持・向上

また近年は、広告の表現内容が企業の信頼やブランド価値に直結するという認識も高まっています。たとえ意図せずとも、差別的な描写やステレオタイプを助長する表現が含まれていれば、生活者からの反発や炎上を招き、結果としてブランド全体の信頼を損なうリスクがあります。

一度傷ついたブランドの信用は、容易には回復しません。こうした事態を防ぐためにも、広告主や制作者は表現の社会的影響に十分配慮し、共感を得られる表現を意識することが求められます。

広告に関するジェンダー表現の世界的動向

広告のジェンダー表現への関心は、すでに世界各地でさまざまな提唱や規制となって具現化しつつあります。次に挙げる4つの事例は、広告のジェンダー表現に対する世界的動向の一端といえるでしょう。

アンステレオタイプアライアンスの発足

アンステレオタイプアライアンスは、2017年にフランスのカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルにて発足しました。メディアと広告を通じてジェンダー平等を推進し、有害なステレオタイプを撤廃するための世界的な取り組みであり、日本にも支部があります。

グラスライオンの創設｜カンヌライオンズ

カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルは、広告業界における世界的なイベントとして広く知られています。2015年、同フェスティバルでは「グラスライオン」賞を新設。これは、性差別や偏見を打ち破るクリエイティブをたたえる賞です。広告におけるジェンダー表現が重要視されつつあることが、顕著に表れている事例です。

有害なステレオタイプ表現の禁止｜英国広告基準協議会（ASA）

英国広告基準協議会では、「性別にもとづく有害なステレオタイプ」による広告表現を禁止する決定がなされました。たとえば、「男性は家事に不慣れ」「女性は家事に慣れている」といった固定観念に根差した表現の広告について市民から声が上がった場合、ASAにて協議の上、削除対象となる可能性があります。広告の社会的影響力と、広告表現によるステレオタイプの助長を強く危惧していることがうかがえます。

GEM®スコアの開発｜全米広告主協会（ANA）

全米広告主協会のプロジェクトであるSeeHer（シーハー）は、広告表現に潜むジェンダーバイアスへの対策として「GEM®スコア」を開発しています。GEM®スコアは世界15カ国で展開されている評価指標です。ジェンダーバイアスの度合いを判断するための指標としては、グローバルスタンダードといえるでしょう。具体的には、定量調査を通じて男性・女性の描き方を「印象」「尊重」「取り上げ方」「ロールモデル」の4つの観点でスコア化しています。

1. 女性・男性の描き方に対して、どのような印象を持ったか？
2. 女性・男性を尊重した丁寧な表現になっているか？
3. 女性・男性の特集のされ方（切り口や取り上げ方）が不適切ではないか？
4. 描かれた女性・男性が生活者の望むロールモデルとしてふさわしいか？

スコアは100が基準値となっており、100以上であればジェンダーの観点で優れていると評価されます。広告におけるジェンダーバイアスの有無を客観的に判断できるという点で、非常に有効です。

• 日本でも2023年より利用可能となっています。
  詳細は「DE&I・ジェンダーに関する評価測定サービス DEI Quick Checker™/GEM®」をご参照ください。

客観性を取り入れたDEI Quick Checker™ 活用のメリット

ここまでに紹介してきたとおり、世界的動向からもジェンダーやDEIに配慮された広告表現が重要視されつつあることが見て取れます。

しかし、広告表現が適切かどうかを判断する担当者や制作者に、何のバイアスもないとも言い切れません。こうしたリスクを抑えるためには、客観的な視点を取り入れることが重要であり、「DEI Quick Checker™」はDEI・ジェンダーの視点で客観的に広告評価を行うことができるチェックサービスです。ここでは、このサービスを活用することで得られる主なメリットを紹介します。

1. 回答精度が高い

DEI Quick Checker™は、脳活動と定量調査結果を組み合わせたデータをAIに学習させ、広告の評価測定に活用しています。脳活動とは、情報処理や思考・感情を生み出したりする脳の働きのことです。脳活動は本人の意思で完全にコントロールできないため、「嘘がつけない」信頼性の高いデータといえます。このデータと定量調査結果を組み合わせることにより、一般的なWeb定量クリエイティブ調査と比べて高い回答精度を実現しています。

2. DEIスコアによる指標化

好き・嫌い/良い・悪いといった表層の奥にある人間の感情と表現評価の因果関係を数値化した「DEIスコア」を開発しました。DEIスコアの基準値として100を設けることにより、そのスコアの高低を判断しやすいのも特長です。従来、生活者が広告を目にした際の感情は数値化しにくい側面がありました。DEIスコアによる指標化は、より具体的かつ客観的視点にもとづく広告表現の検証を可能にします。

3. 2つの視点でアナリストが考察

DEI Quick Checker™は、AIによって算出されたDEIスコアを元に、ハイコンテクストな部分（メディア環境や発信者など）を加味した分析を行えます。アナリストが広告の企画意図を理解した上で改善の方向を提言するため、より実践しやすい改善策を提案できます。

• DEI Quick Checker™の詳細については、次のページもあわせてご参照ください。
  DE&I・ジェンダーに関する評価測定サービス DEI Quick Checker™/GEM®

ジェンダーやDEIに配慮した広告表現へ

世界的な潮流を踏まえると、今後は日本においても、より一層ジェンダーやDEIに配慮した広告表現が求められるようになると想定されます。ジェンダーをはじめ、DEIへの十分な配慮がなされたクリエイティブを制作することは、企業として果たすべき社会的責任の1つであると同時に、ブランドのレピュテーションリスクの観点でも重要なポイントといえます。今回紹介した世界的な動向を参考に、ジェンダーやDEIに配慮された広告表現を実現していきましょう。

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