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2025.08.04

広告に関するジェンダー表現の動向・規制の状況【日本国内】

日本国内で広告を制作・出稿する際、さまざまな規制に抵触することのないよう留意している事業者様は多いことでしょう。とくに薬機法や景品表示法といった、法令に関わる事項については入念にチェックされているケースは少なくありません。一方で、「人の描き方」に関する規制は現状存在していないことから、適切な広告表現を見極めるのは容易ではないと感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、広告における「人の描き方」について、ジェンダー表現を軸に近年の動向や規制の状況をまとめています。適切な広告表現を見極めるのが難しいとされる主な理由や、解決に役立つツールも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

日本における広告表現規制の現状

はじめに、日本国内における広告表現規制の現状について解説します。

薬機法・景品表示法による規制

広告表現に関わる規制と聞いて、「薬機法」や「景品表示法」が思い浮かんだ方は多いのではないでしょうか。いずれも消費者を保護する目的で定められている法律のため、広告を制作する際には抵触することのないよう十分に留意する必要があります。

 規制対象主な目的
薬機法医薬品等保健衛生上のリスクを抑制すること
景品表示法商品・サービス全般消費者の自主的・合理的な選択を阻害しないこと

そのため、特定の疾患が治癒すると誤解させかねないコピーを商品パッケージに表示したり、「業界No.1」と根拠なく銘打ったりした場合、これらの規制に抵触するおそれがあります。よって、広告制作に際してこれらの法律を念頭に置き、不適切な表示がなされないようチェック体制を整えている企業は少なくないはずです。

「人の描き方」に関する規制は現状存在しない

一方、広告内における「人の描き方」に関する具体的な規制は現状存在していません。人の描き方とは、広告に登場する人物がどのように位置付けられ、表現されているか、という視点のことです。

たとえば、「乳幼児の世話をしている女性」と「くつろぎながら見守る男性」が登場する広告を制作した場合、あたかも子育ては女性の役割と決め込んでいるかのような印象を与えかねません。このような、社会的な性別とそのイメージに関わる表現のことを「ジェンダー表現」といいます。広告等のジェンダー表現に関してはしばしば「炎上」の原因となっている一方で、具体的な規制は設けられていないのが実情です。

広告のジェンダー表現は世界的に注目されている

ジェンダーやDEI(多様性・公平性・包括性)に配慮した広告表現を重視する動きは、世界的に広がりつつあります。一例として、英国では「性別にもとづく有害なステレオタイプ」による広告表現を禁止する決定がなされました。現在の英国において、「男性は家事に不慣れ」「女性は家事に慣れている」など固定観念に根差した表現の広告であると市民から声が上がった場合、英国広告基準協議会(ASA)にて協議の上、削除対象となる可能性があります。

一方、日本における広告表現への配慮はまだ十分とはいえないのが実情です。オリコムが独自に実施した調査では、マーケターと生活者の間に不公平や差別的な表現に対する大きな意識の差があることもわかりました。

  • マーケター:「ジェンダー表現に配慮している」との回答が95.3%を占める
  • 生活者:広告が「ジェンダー表現に配慮されている」との回答は34.1%にとどまる

今後は日本においても諸外国と同様、広告のジェンダー表現に向けられる目がいっそう厳しくなっていく可能性は十分にあるでしょう。

ジェンダー表現に関する倫理綱領・提言の例

日本国内の動きとして、業界団体がジェンダー表現に関する倫理綱領や提言を公開した事例が挙げられます。

一般社団法人 日本広告業協会(JAAA)広告倫理綱領

日本広告業協会(JAAA)では「広告倫理綱領」ならびに、広告倫理綱領に基づいた「広告人行動指針」を定めています。なかでも、広告倫理綱領にあるクリエイティブ・コードでは「広告は、人権に配慮し、不当な差別的表現をしてはならない」「広告は、品位を保ち、不快な印象を与える表現をしない」とあります。

これらの文言には、ジェンダー表現に配慮する必要性も含まれていると考えられます。差別的表現を戒めるだけでなく、不快な印象を与えかねない表現に関しても「あってはならないこと」として位置付けられているのが重要なポイントです。

公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会(JAA)緊急提言

日本アドバタイザーズ協会は、2025年2月に「広告業界への緊急提言:信頼回復と健全な発展に向けて」と題した提言を公開しました。ここでは、次の4つの提言がなされています。

  1. 人権擁護の徹底:人権方針の策定や従業員への教育・研修の実施など
  2. ファクトチェックの徹底:情報の真偽を見極めることの重要性について
  3. 集団的暴力による被害の抑止:名誉毀損や誹謗中傷等に加担しないこと
  4. メディアリテラシーの向上:生活者の啓蒙につながる情報発信や教育啓発に協力すること

これらの提言は、広告に向けられる目が厳しさを増している昨今の世相を映し出しているともいえます。ジェンダー表現もまた、あらゆる広告主にとって重要な課題となっているのは間違いないと考えてよいでしょう。

「人の描き方」に対する適切な広告表現を見極めるのが容易ではない理由

ジェンダー表現をはじめとする「人の描き方」への配慮は重要な課題である一方で、その描き方が適切かを見極めるのは決して容易なことではありません。その主な理由として、次の3点が挙げられます。

1. 人によって受け取り方や解釈が異なる

「適切な表現」とは何かを考えるとき、人によって受け取り方や解釈がまちまちになりやすいことは大きな問題の1つです。自社が適切と判断した表現であっても、想定していなかった視点や解釈によって批判的な声が上がる可能性も否定できません。ある人は問題ないと感じた広告表現が、別の人にとっては不快なものとして映ることは十分にあり得ます。

2. 適切/不適切の判断基準も変化する

「人の描き方」に対する業界ルールが存在していないことから、企業によってはDEIに関するガイドラインを定め、適切な表現といえるかをチェックしていることもあるでしょう。

しかし、DEIに対する意識は発展途上の段階にあり、適切/不適切の判断基準も変化していく可能性があります。不適切な表現を排除するための対策としてガイドラインを策定することは、表面的なチェックにとどまってしまうリスクと表裏一体であることに注意が必要です。

3. インパクトを重視したクリエイティブとのバランス

広告本来の目的とのバランスを取るのが難しいという側面もあります。多くの生活者に注目され、強く印象づけられるクリエイティブにするには、インパクトのある表現にすることも重視すべきポイントです。一方で、人権配慮の視点も欠かせないことから、両者のバランスを取るのは決して容易ではありません。

意外性やインパクトを狙った結果、人権配慮の視点が欠落するのは避けたいところです。しかしながら、人権配慮を重視するあまり平凡な表現にとどまってしまうと、十分な広告効果が得られない事態に陥りかねません。このせめぎ合いの中で、どうバランスを保つかが問われるでしょう。

客観性を取り入れたDEI Quick Checker™ 活用のメリット

広告表現に客観的な視点を取り入れたい事業者様には、DEI・ジェンダーに関する評価測定サービス「DEI Quick Checker™」の活用をおすすめします。DEI Quick Checker™の主な特長は次の3点です。

1. 回答精度が高い

広告評価への回答精度が高いことが、DEI Quick Checker™の大きな特長です。AIによる判定には、脳活動と定量調査データを活用。脳活動は本人の意思ではコントロールできないことから、「嘘がつけない」信頼性の高いデータといえます。これらのデータと定量調査の結果にもとづく相当数の広告評価をAIが学習しているため、一般的なWEB定量クリエイティブ調査と比べて高精度の回答を得られる点が強みです。

2. DEIスコアによる指標化

明確な指標化を実現していることも、DEI Quick Checker™の特長の1つです。DEIスコアは好き/嫌い、良い/悪いといった表層の奥にある人間の深い感情と、表現評価の因果関係を研究した結果にもとづいています。このスコアが基準値(100)を超えているかどうかによって、広告表現に対する客観的な判断をしやすくなる点が大きなメリットです。勘や経験にもとづく曖昧な評価から脱し、明確な指標にもとづく広告表現のチェックを実施したい事業者様に適しています。

3. 2つの視点でアナリストが考察

DEI Quick Checker™では、数字に基づいた分析をベースに、メディア環境や発信者といったハイコンテクストな要素を加味してアナリストが考察し、広告改善の方向性まで提言します。

機械的な分析や課題点の指摘にとどまらず、企画の意図を理解した上で改善の方向性まで含めて示せる点が大きな特長です。「具体的に何を改善すればよいのか」も含めて把握したい事業者様にとって、広告表現の改善に直接つながる解決策となり得るでしょう。

  • DEI Quick Checker™の詳細については、以下のページもあわせてご参照ください。

DEI Quick Checker™

【 AI + 人 】により、
コンセプトとDEIの両面から評価・分析。
客観的な判断軸を提供。

主観に依存しない広告表現の検証が必要

日本における広告表現規制は、薬機法や景品表示法のような「消費者に不利益を与えないための対策」にとどまっています。しかしながら、広告の社会的影響力の大きさを鑑みると、人権擁護の実現に向けた重要な役割を担っていることは明白です。ジェンダー表現に関しても、現状では客観的な判断基準が定まっていないからこそ、主観に依存しない検証を行うための仕組みづくりが求められています。各種規制への対策に加えて、「人の描き方」に関するチェック体制の構築を検討してみてはいかがでしょうか。


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