オリコム ウェイ コラム

IMC雑記帳 白土 栄次

新しい風をとらえて

 少し前の話になるが、3月27日の日経朝刊に出た「3ない」消費という言葉が勉強会仲間の話題になった。買わない/持たない/捨てない、が時代のトレンドだという。節約し、修理して長く使い続けたり、人とシェアリングしたり、リフォームやリユースしたりする諸々の動きを指している。

 あるベテラン氏は「これは消費の否定であり、広告の敗北である」と危機感をつのらせた。いわく、広告は「新製品と旧製品のどちらでもお好みの商品をお使い(続け)ください」という前提には立たないものだから。思わずV.パッカードの『浪費をつくり出す人々』(1960)を思い出して、苦笑いするしかなかった。

 マーケティングは、人々のQOL(生活の質)を高める、ある方向の風に向かって果敢に進む。その動きは、ヨットに似ている。流行りの感がある安売りは、風の方向を見失って潮に流されていることにしかならない。

 現在の消費の海には、環境や安全や福祉といった社会性の風が吹いていて、天然自然・心身の健康・交流‥‥といった波を起こしている。私たちの職場でも、行政や協会団体はもちろん、企業のソーシャルキャンペーンの仕事はしっかり動いている。そんな風の来る方向に、商機もある。

 おそらく今、経済成長を支えてきた浪費性消費が退潮して、社会性消費が台頭するという深層のうねりが起きている。伝統的メディアの衰退とソーシャル・メディアの隆盛がそこにシンクロし、社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)やCRM(コーズ・リレイティド・マーケティング)もその流れに沿っている。

 ニューズウィーク2月16日号の「We Are All Socialists Now(もはや我らみな社会主義者)」という巻頭言も、政治面でのそうした変化を敏感に感じとっている。オバマ政府の支出の対GDP比は、すでにフランスやスウェーデンといった社会民主主義の国の水準にあるという。

 冒頭の日経の記事で、伊藤元重・東大教授は「この不況が多様なサービスの揺りかごとなる」と述べている。何とかこの荒海を乗り越えて、意味を一新した豊かな「社会」づくりに貢献したいものだ。

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 入社年度:1982年
【関心分野】
  (1)マーケティング・マネジメント (2)プロダクト・マネジメント (3)企業動向、ビジネス動向